知人の犬がガンを患い、放射線治療を受けているそうです。犬にも放射線治療があることに驚きましたが、私もイヌを飼っているので今後のためにどんなものなのか教えてください。

動物医療の世界でもガンの治療は様々な方法が試されていますが、現在もなお外科手術、抗がん剤治療、放射線治療が主軸となっています。今回お問い合わせいただいた動物の放射線治療のご経験のある方は少ないかもしれません。その1番目の理由としては全ての腫瘍に効果がみられるというわけではなく、全く効果がみられないものもあるということです。2番目の理由として治療施設が限られていること、関西では大阪府立大学、ネオベッツVRセンター、三重県の南動物病院ぐらいだと思います。そして、週に何回か全身麻酔をかけての治療になるということと、治療回数や内容にもよりますが治療費が高額であるのも理由の一つだと思います。
放射線療法が適応となるのは、鼻腔内腫瘍、口腔内腫瘍、脳内腫瘍などどうしても手術が困難な場所である場合が多いと思います。そのほか手術で腫瘍が完全に取りきれない場合に、術後の補助療法としておこなわれることもあります。そして骨肉腫など痛みのひどい腫瘍に対して疼痛緩和目的でも実施されます。
治療スケジュールは、目的によって異なります。根治目的の放射線療法の場合は、週に3から5回、全身麻酔下で放射線照射を行い、計12回以上(治療スケジュールは施設や症例によって異なります)おこないます。症状の緩和目的の場合は頻度も回数も少なくなります。
副作用としては、放射線障害として皮膚の炎症や脱毛、照射部位によっては口内炎や角結膜炎などが起こることがあります。
 通常、腫瘍が見つかった場合、リンパ腫のように化学療法が有効なものは抗がん剤治療が第一選択となりますが、ほとんどの腫瘍では外科的に切除可能かどうかの判断がなされます。場所的に手術が困難で、病理組織検査によってその腫瘍の放射線感受性が高いことが確認された場合に放射線治療が選択肢のひとつになります。放射線療法が第一選択になる腫瘍には鼻腔内腫瘍があります。部位にもよりますが、鼻腔内の腫瘍は手術での成績が良くありません。鼻血や鼻づまりによる呼吸困難など鼻腔内腫瘍による症状が放射線治療によってずいぶん改善し、治療後は呼吸が楽になることが多いです。しかし、残念ながら根治は困難だと言われています。