我が家の愛犬も15歳になります。この数年で歩き方をはじめ、いろんな点で衰えてきたなぁと思っていますが、今後飼っていくうえで注意すべきことを教えてください。

高齢になってくるといろんなものに対する反応や歩き方など様々な行動の変化がみられるようになります。もう年だからしょうがない、と全てを年齢のせいにしてしまうことによって病気を見逃していることが意外と多いように思います。いくつか例を挙げてみます。
 高齢で立てなくなって寝たきりの介護をしている犬が、認知症なのか夜泣きがひどくて家族が眠れません、という主訴で来院された方がありました。ワンちゃんの表情をみると認知症の独特な表情はみられず、いくつかの検査によってひどい尿路感染症が判明しました。夜中に吠えていたのはおそらく排尿痛、あるいは残尿感を訴えていたものと思われます。抗生剤の治療により、その後ワンちゃんもご家族も穏やかにすごしていらっしゃるようです。高齢犬の夜泣きイコール認知症というわけではないということですね。
別のワンちゃん、14歳のプードルです。半年ぐらい前から年のせいか寝てばっかりで食欲も若い時のように、がつがつ食べなくなったということで来院されましたが、血液検査の結果、肝臓疾患でした。2週間の投薬で食欲も戻り元気になりました。また、別の高齢のワンちゃんも同様に元気食欲の減退を主訴に来院されました。その子は甲状腺機能低下症で、元気消失と脱毛がみられていましたがホルモン治療により見違えるような若々しい毛並みに戻り、しっかり食べて元気に過ごしています。いずれも年のせいにして経過観察していたらさらに重篤な症状になっていたかもしれません。
その他、年のせいか目が見えていない、耳が遠くなったというご相談も多いです。見えてない場合は老化ではなく、病気を疑い精査が必要になります。治療不可能なものも多いですが、普通に歩いていてぶつかるようなら早めに診察を受けましょう。耳に関しては病気を除外できれば老化のこともあるかもしれません。背中を丸めてよぼよぼ歩くようになったと
いうのも多いですね。関節痛や腰痛が原因して長い時間をかけて脊椎が変形してく                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              るためにおこるものなので、歩行異常がみられたら早めに疼痛管理をしてあげることで悪化を防ぐことも可能かもしれません。いつも同じ方向に回っている、これは認知障害でもみられる無目的な歩行に似ていますが、老犬に見られる前庭障害であれば改善することも可能かもしれません。
いくつか例を挙げましたが、今までになかった行動の変化がみられるようになった時、年だからしょうがない、とあきらめる前に、まずは病気を疑ってみるようにしましょう。