うちで飼っている16歳の猫が慢性腎不全と診断されましたが、その病院では自宅での点滴を勧められました。他に何かできることはないでしょうか?点滴も上手くできるか心配です。

以前にも慢性腎不全については少しお話したことがありますが、実際の治療についてお話しします。慢性腎不全と診断されていても食欲があるかないかで治療は変わってきますし、内服薬を与えられるかどうかも重要なポイントになります。
元気食欲もなく、投薬もできない状態でしたら入院して静脈点滴をしながら積極的に治療を行います。その他にも血液検査をもとに、血中リン濃度が高ければ数値を下げるための内服薬、カルシウムが低ければカルシウムの投薬をします。ほとんどの慢性腎不全では高血圧がみられますので血圧測定をして血圧を下げることも大事ですし、吐き気があるようでしたら吐き気を止めてあげることも食欲を出すには必要でしょう。
食欲が戻ったら、自宅での点滴もいい方法だと思います。猫ちゃんにとっては病院へ行くというストレスがなくなるわけですから。ただし猫ちゃんが点滴をさせてくれるかどうかと、飼い主さんが適切な量を上手く点滴できるかということが問題になります。自宅での点滴は皮下点滴になります。犬や猫、とくに猫では皮膚をつまんでひっぱるとヒトと違って非常に伸びますよね。皮膚と筋肉の間の皮下という部位に点滴の液を入れるのが皮下点滴です。量や状態にもよりますが、3~4時間で吸収されて全身にいきわたり、脱水症状を改善することができます。1回で1日分の点滴を入れようとすると過剰になるので1日分を2~3回に分けて行うようにします。そうすることで心臓への負担は軽減できますし、吸収不良も防げます。実際にはお一人が猫の前足等を押さえて保定し、もう一人が背中か腰のあたりの皮下に針先がくるように点滴の針を刺します。このとき使用する針が細いと刺す痛みはあまりありませんが必要量を入れるのに時間がかかります。針が太いと一瞬痛みはあるかもしれませんがその分点滴は早く終わります。腎不全では点滴は不可欠なのですが、やみくもにガンガン点滴をすれば治るということではありません。皮下点滴が多すぎて吸収できないと皮膚が痛んできたり、肺に水が溜まって肺水腫を起こすことになってしまいますので、獣医さんに脱水の程度の評価をしてもらい適切な量を点滴するように指示してもらいましょう。あとは内服薬が飲めれば比較的長期間元気で過ごせることも多いように思います。