ぬえ塚の怪物

むかし、源頼政という弓の名人が、京都の御所をさわがす怪物をうちとることになりました。
その夜も丑の刻(午前二時ごろ)になると、三条の森のあたりから
あやしい黒雲がわいて、ぬえという鳥の鳴声に似たもの悲しい鳴声がつたわると、
天皇は大へん苦しみだされるのでした。
頼政は、弓矢を用意して静かに目を閉じ、神に祈り、空を見上げると、
雲の間にあやしい影が見えました。
この時とばかり、矢をはなつと手ごたえがあり、
大きな音とともに怪物が落ちてきました。
よく見ると、頭がサル、からだはタヌキ、手足はトラ、尾はヘビというようかいでした。
人びとはおどろき、その死体を丸木舟に乗せて川に流したところ、
淀川―大阪湾を流れ、はるか芦屋の浜に流れつきました。
これを見た村人たちは、たたりを恐れて、ていねいに塚をつくってとむらい、
この塚のことを「ぬえ塚」と呼ぶようになりました。
むかしの本に「ぬえ塚、芦屋川住吉川の間にあり、いまさだかならず」
と書かれています。
今、芦屋川にそったテニスコートの北側、芦屋公園の中にぬえ塚がありますが、
これは、ずっと後につくられたものです。
※掲載している情報は、2005.10.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。