レインマン

いい映画には必ず印象的なシーンがあります。無論、同じ映画でも感じ方は人それぞれですから、印象的なシーンは見た人それぞれによって違うものになるでしょう。しかし、どんな人にも好きな映画には好きなシーン、忘れられないシーンがあるはずです。私にとってこの「レインマン」の忘れられないシーンはダスティン・ホフマンとトム・クルーズが演じる二人の兄弟がラスベガスのホテルでダンスを踊るシーンなのです。
事業が行き詰まって破産寸前のチャーリーのもとに、絶縁状態だった父の訃報が届きます。葬儀に出席するため故郷に戻ったチャーリーは遺産のほとんどをある人物が相続することを知ります。しかもその人物はチャーリーがその存在すら知らなかった彼の兄だというのです。しかも兄レイモンドは重度の自閉症でした。チャーリーは正当な遺産相続を求めて、レイモンドを連れ出して自宅のあるロサンゼルスへと向かいます。
さて本作はロスアンゼルスへと向かうロード・ムービーになっており、チャーリーとレイモンドの二人の兄弟の交流と成長を描いています。最初は自己中心的で、自分の事業にしか関心が無かったチャーリーはレイモンドと旅をすることで、自分が両親に拒絶されていたわけではないことを知り、お荷物だったレイモンドとも徐々に心が通じるようになっていきます。一方レイモンドもチャーリーと接することで少しずつ心を開いていき、病院では出来なかった様々な経験をしていきます。
本作のラストシーンには賛否両論があるのではないかと思います。結局、二人の心情の変化、成長以外にはいっこうに事態は前へ進まないわけですから。しかしトム・クルーズ演じるチャーリーの心の成長こそがこの映画のテーマであると思えば、このラストシーンはこれでいいのではないかと私は思います。
自閉症の兄、レイモンドを演じたダスティン・ホフマンは本作でアカデミー主演男優賞を受賞しており、難しい役どころを卓越した演技力で好演しています。一方、弟チャーリーはトム・クルーズが演じ、こちらもしっかりした芝居で心情が変化していく様を見せています。この二人の会話・やり取りが映画の大部分を占めているので、二人の高い演技力がこの映画のキーだとも言えるでしょう。
本作には二人が並木道を歩く有名なシーンがあるのですが、何故か私には二人でダンスを踊るシーンの方が印象に残りました。ひたすら自分の儀式的日常にこだわっていたレイモンドが積極的にダンスを覚えたがり、少しずつ心を通わせていたチャーリーがレイモンドの手をとって踊り、ダンスを教えるこのシーンがなんとも感動的なのです。二人の交流と成長を示す象徴的なシーンだからかもしれません。
映画好きが集まってどんな映画が好きか話すのも盛り上がりますが、一本の映画についてどのシーンが印象に残ったか、話してみるのも楽しいものです。そういう話の中で、もし自分と好きなシーンまでピタリと合う人を見つけたならば、その人との付き合いを大切にすることをお勧めします。
その人は貴方のメインマン(親友)なのかもしれないのですから。
CINEMA DATA
1988年制作
【配給】 | MGM |
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【監督】 | バリー・レビンソン |
【出演】 | ダスティン・ホフマアン |
トム・クルーズ | |
バレリア・コリノ |
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※掲載している情報は、2006.01.01の情報です。
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