少林サッカー

昨今のCG技術の発達は、これまで不可能だった映像を可能にしました。スピルバーグは「ジュラシックパーク」で恐竜を現代に蘇らせましたし、キャメロンは「T2」では液体金属のモンスターを生み出し、「タイタニック」では豪華客船タイタニックをリアルに再現しました。これらは皆、 CG技術なくしては不可能な映画だったでしょう。CG技術は映画人にとって、それぞれの「夢の映像」を可能にする技術なのです。そして香港のコメディ・メイカー、チャウ・シンチーにとっての夢の映像は、この「少林サッカー」なのかもしれません。
「鋼鉄の脚」と呼ばれる若者、シンは日夜、少林拳の普及を夢見ていました。そんな彼が、かつてのサッカーの名選手ファンとの出会いで最高のアイデアを思いつきます。「少林拳でサッカーをして勝ちまくれば、みんな少林拳に注目するはずだ!」シンとファンはシンの兄弟弟子を集め、サッカーチームを結成、全国大会に挑むのですが…。
冒頭でも述べたように、本作にはCGとワイヤーワークによって、今まで不可能だった映像がふんだんに登場します。しかもそのどれもが最高に馬鹿馬鹿しくて可笑しいのです。空を飛ぶ体重100kgを越えるデブ、強烈なシュートで吹き飛ばされるディフェンスの選手、主人公シンのシュートは強烈なスピンで竜巻を巻き起こし、ゴールポストを捻じ曲げ、キーパーは服をふきとばされ全裸になります。こうして文章にしていると、いささか頭痛がしてきますが、とにかく高度な秘術を使って、くだらなくも面白い「夢の映像」を見せてくれます。これらの映像を見るだけでも、本作は一見の価値がありますが、それを抜きにしてもコメディとして十分に面白く出来ています。よくもまぁ、これだけ変な顔の人を集めたなと感心するくらい奇妙な人々が次から次へと出てきますし、チャウ・シンチーお得意のお馬鹿なギャグと有名映画のパロディも満載で楽しめます。
監督主演のチャウ・シンチーは「食神」「喜劇王」など、これまでにも斬新かつ馬鹿馬鹿しいコメディ映画を監督主演して、香港では有名なヒットメイカーで、日本でもその筋のファンには有名な存在です。ン・マンタ、ティン・カイマン、ウォン・ヤッフェイ達ファンにはおなじみの顔ぶれもいい味を出しています。(特に「鉄の頭」を演じるヤッフェイに注目。素晴らしい演技で絶妙の格好悪さを表現しています。)ヒロインを演じているヴィッキー・チャオは実に可愛らしい女優さんなのですが、本作では序盤はひどいアバタ顔のメイク、中盤では強烈なオカマメイク、終盤ではスキンヘッドと、その美貌を生かすシーンは皆無に等しく、これがまた可笑しい。
本作は「とにかく何も考えずに笑いたい」という時にお勧めの映画です。
くだらなくも可笑しい映像やギャグの数々が、小さな悩みくらい吹き飛ばしてくれることでしょう。
最後に、私が本作を映画館で鑑賞した時に、隣りにいた少年が映画の後、漏らした一言で本作の紹介を締めくくりたいと思います。
「こんなの、サッカーじゃないやい。」
おっしゃる通りです。(笑)
CINEMA DATA
2001年制作
【配給】 | クロックワークス |
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ギャガ・コミニュケーションズ | |
ヒューマックスピクチャーズ | |
【監督・脚本】 | チャウ・シンチー |
【出演】 | チャウ・シンチー |
ヴィッキー・チャオ | |
ウォン・ヤッフェイ |
クロックワークスよりDVD発売中
©Eiga-zaru 2004-2018
※掲載している情報は、2005.12.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。