ナイトメア・ビフォア・クリスマス

パペット・アニメーションという映像手法があります。人形を少しずつ動かしながら1コマずつ撮影して、人形が動く映像を撮るというものです。
普通の映画だと一秒間に20~30コマですから、それはもう大変な時間と手間、熟練した技術を必要とされます。そのためか最近はもっと簡単で表現的にも幅のあるCG映画が主流になり、パペット・アニメーションの映画はほとんど作られなくなりました。しかし今でもパペット・アニメーションは、その独特な雰囲気を買われてかCMやミュージッククリップなどで見ることが出来ます。今回はそのパペット・アニメーションの名作「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」をご紹介します。
ハロウィンタウン。そこには吸血鬼や幽霊、様々なオバケが住み、一年に一回ハロウィンの日に人間界に向けてハロウィンのお祭りを送り出すために働いています。なかでも「かぼちゃの王」ジャックは人々を怖がらせることにかけては超一流で、ハロウィンタウンの指導者的立場にありました。そのジャックが、ある日偶然にクリスマスというお祭りがあることを知ります。毎年同じ事の繰り返しに飽き飽きしていた彼は、クリスマスの楽しそうな雰囲気に魅了され決心します。「よし!今年のクリスマスは、この僕が人間界に送り出してやろう!」こうしてハロウィンタウン総出でクリスマスの準備がはじまるのですが…。
この映画の一番の魅力は個性的なキャラクターの面々です。主人公のジャックをはじめ、つぎはぎだらけの女の子サリー、ズタ袋のような博打好きの悪者ブギー・ウギー、幽霊犬ゼロなど一度見たら忘れられない「怖くて可愛い」キャラクター達が実に生き生きと動いています。今でも大きなオモチャ屋さんに行けば彼らのキャラクターグッズが売られているのですから、その人気の高さがうかがえます。またこの映画はパペット・アニメーションでありながらミュージカルになってます。こうした個性的な人形達が歌い踊るわけですが、その楽曲も印象的でミュージカルとしても高いレベルのものだと思います。また、先に述べたように大変な手間と技術を要するパペット・アニメーションで、楽曲に合わせてキャラクターを動かすのは大変に難しい作業だっただろうと思いますが、実に自然で感心させられます。
原案・キャラクター設定を手がけたティム・バートンは、独特の薄暗い映像美と悲しみを抱えたキャラクターを描く手腕が高く評価されています。
監督作にも「シザー・ハンズ」「バットマン」などの異形の存在の悲しみを描いた作品が多く、熱心なファンも多い監督さんです。なかでも本作はティム・バートンのカラーが最も色濃く出ている作品だと言えるかもしれません。
大変な時間と手間、そして技術が要求されるパペット・アニメーションの映画が今後つくられる可能性はそれほど高くないでしょう。現実に多くのアニメーターがそれを夢見ていますが、なかなか難しいようです。しかしそれでも本作のような良作を観ると、またパペット・アニメーションの映画を観てみたいと感じるのは、きっと私だけではないと思います。いつの日か「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」を越えるパペット・アニメーションの映画に出会えることを気長に待っていたいと思います。
CINEMA DATA
1993年制作
【配給】 | タッチストーンピクチャーズ |
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【原案・キャラクター設定】 | ティム・バートン |
【監督】 | ヘンリー・セレック |
ブエナ ビスタホームエンターテイメントよりDVD発売中
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※掲載している情報は、2005.11.01の情報です。
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