世界中で大人気のお菓子を作るウィリー・ウォンカのチョコレート工場。謎に包まれたこの工場に5人の子供が招待されることになります。しかし、その幸運に恵まれるのは世界中に出荷される何万枚ものチョコレートに同封された金のチケットを引き当てた子供とその家族だけです。貧乏だが心優しい家族思いの少年、チャーリーはそのチケットを引き当て、おじいちゃんと共にウィリー・ウォンカのチョコレート工場へと足を踏み入れます。
原作はロアルド・ダールの有名な児童小説。ティム・バートンお得意のおとぎ話の語り口と美しい町の光景で物語りは始まります。このあたりは「シザー・ハンズ」を思い出させる美しくも少し物悲しいムードですが、舞台が工場に移ると、子供の空想が現実になったような突飛で少し意地悪、それでいてユーモアに溢れた「マーズアタック」のノリです。このかけ離れた感覚が同居するところがティム・バートンの魅力だといえるでしょう。

本作を見終わって最も印象に残るのは以下の２点でしょう。
1.ジョニー・デップが非常に楽しそう
謎のチョコレート工場の主、ウィリー・ウォンカを演じたジョニー・デップが異常に楽しそうです。こういった奇妙な役柄を愛する彼は実に生き生きと芸術家で子供っぽく、トラウマを抱えた天才ショコラティエを演じています。
2.ウンパ・ルンパの歌と踊り
ウンパ・ルンパとはチョコレート工場で働く未開の地から来たこびとたちで、皆、同じ顔（しかも武蔵丸に似たおっさん）をしています。武蔵丸ふうオッサン顔のこびとが大勢登場するだけで十分に印象的なのですが、場面場面でミュージカル風に彼らが踊りと歌を披露し、それはもう強烈なインパクトです。ウンパ・ルンパを演じたディープ・ロイは一人何役も演じているわけですが、もうほとんどこのオッサンの仮装ショーのような有様です。
上記２点があまりに強烈過ぎて、他の出演陣どころか、家族愛という作品のテーマすら吹き飛ばしかねないという問題はありますが(笑）、強く印象に残る映画になっています。

本作に限らず、古いホラー映画やB級映画の熱烈なファンであるティム・バートンはそういった映画に出演した俳優を好んで起用する傾向があり、本作でも何本もの吸血鬼映画でドラキュラ伯爵を演じたクリストファー・リーがウィリー・ウォンカの父親を演じています。（ちなみにあまり知られてはいませんが、今をときめくジョニー・デップも映画デビューはB級ホラー「エルム街の悪夢」でした。）

本作は、映画ファンの子供がそのまま大人になったようなティム・バートンの特徴がよく出ている一本だと思います。
子供はもちろんのこと、子供の心を忘れていない大人、日常のごたごたから一時、離れて童心に帰って心を休めたい大人の方にもおすすめです。
あ、それと武蔵丸親方が理想のタイプだという貴女にも。

CINEMA DATA

2005年制作

ワーナー・ホーム・ビデオよりDVD発売中