かつて冷酷無比の悪党としてその名を知られたマニー。しかし今では改心し、ごく普通の農夫として生きていました。ある日、厳しく貧しい生活に苦しむ彼に賞金稼ぎの話が舞い込んできます。娼婦の顔を切り刻んだ牧童二人に娼婦達が賞金をかけたのです。マニーは生活のため再び銃を手にして、昔の仲間ネッドと若いガンマン、キッドと共に旅立つのですが…。
イーストウッドが演じる主人公マニーは、今は亡き妻のおかげで極悪非道の生活から立ち直り、今では若い頃の所業を悔いている年老いたガンマンです。この役どころはかつてマカロニ・ウェスタンや「ダーティー・ハリー」などでアクションスターとして知られたイーストウッドにピッタリで、キャリアに裏打ちされた独得の存在感が感じられます。彼の前に立ちふさがるジーン・ハックマン演じる保安官との対決は震えが来るような緊張感と凄み（すごみ）で、派手さばかりが売りの昨今のアクション映画にはない、緊迫した迫力があります。本作の銃撃戦は決して格好よいものではなく、リアルで痛みが感じられるものになっていて、「人を殺す」という行為の重みと罪深さを強調するものになっています。若いころの悪行と伝説を抱えて今を生きているマニーの姿と重なって、本作をありふれた西部劇から際立った存在にしています。

イーストウッドは主演・監督の二役をこなし、自身が演じてきた西部劇のアウトローの晩年を描いています。豊富なキャリアに裏打ちされた存在感で主人公マニーを演じ、特にマニーが激しい怒りによって、静かに、しかし劇的に「伝説のガンマン」に変貌するシーンは強く印象に残りました。彼の相棒ネッドにはモーガン・フリーマン。もうこの人が出ているだけでいい映画のような気がしてくる名優で、年月を重ねた男の友情を渋みたっぷりに見せてくれます。この二人を相手にする過激で冷酷な保安官にはジーン・ハックマンが演じ、イーストウッドと強烈な「凄み」対決を繰り広げています。

イーストウッドは「ダーティー・ハリー」などが有名ですが、監督としても非凡な存在で、本作を始め「ミスティック・リバー」「マディソン郡の橋」など数々の名作を世に送り出しています。本作では作品賞、監督賞を始めアカデミー4部門に輝きました。2005年度も「ミリオン・ダラー・ベイビー」で作品賞、監督賞などを獲得しています。若い頃はアクション映画や西部劇でヒット作に主演し、年老いてからは年齢相応の演技を披露し、監督として評価される作品を創りだす。俳優として、映画人として実に素晴らしい年輪の重ね方だと思います。

クリント・イーストウッドこそ理想の映画人の人生を生きているのかもしれません。

CINEMA DATA

1992年制作

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