ラストサムライ

外国の文化を理解するのは難しいものです。過去に日本を舞台にした外国映画でも、あちこちにウンザリするような誤解や偏見がありました。
例えば、ショー・コスギ主演の「ザ・ニンジャ」ではオープニングの金閣寺の映像にTokyo Japanのテロップ。「ドラゴン怒りの鉄拳では袴を前後逆にはいた怪しい日本人が大暴れしていました。前置きが長くなりましたが今回、ご紹介するのは日本をテーマにした外国映画には珍しい良作、「ラストサムライ」です。
オールグレン大尉は南北戦争で勇名を馳せた英雄でしたが、戦争が終わった今では時代に取り残され、すっかり落ちぶれていました。そんな彼に日本で軍隊の教育をしないかという話が舞い込んできます。日本に渡った彼が部隊を率いて対峙したのは、近代化に取り残されたサムライ達でした。
本作はアメリカ人、オールグレン大尉の目を通じて、近代化へと突き進む日本を舞台に、信念と誇りを持って生きるサムライ達の姿を描いています。南北戦争での体験で生きる道を見失っていたオールグレンは、武士道を貫く侍、勝元との交流を通じて徐々に、自分の誇りを取り戻していきます。本作は2時間を越える長時間の映画なのですが、こうした心の交流、人間の成長を描く静かなシーンと、剣戟によるアクション、合戦シーンがバランスよく配置されていて、長さを感じさせません。落ち着いた演技を見せる出演陣と静かな風景、対して激しく迫力満点のアクションは見事なコントラストで、それぞれに印象的なものになっています。特に最後の合戦シーンの迫力と壮絶さは特筆すべき出来栄えです。
主演はトム・クルーズ。異文化の中で自分を取り戻していくオールグレン大尉を好演しています。また、脇を固める日本人の出演者が皆、素晴らしい演技をしています。サムライの英雄、勝元を演じた渡辺謙はさすがの存在感でアカデミー助演男優賞ノミネートも納得の演技です。勝元の腹心を演じた真田広之や、オールグレンの世話をする女性を演じた小雪も実にいい仕事をしていますが、特に悪役である大村参議を演じた原田眞人がいいです。その憎たらしさときたら…。
最後に本作は、明治維新前後の日本をモデルにしたフィクションであることを言っておかねばなりません。実在の人物は登場しませんし、設定、時代考証的にもリアルなものではありません。冒頭で述べたような誤解や間違いは比較的少ないものの、日本の風景にそぐわないシダ植物が写っていたり、ちょっとした誤解や間違いは見受けられます。しかし本作には日本人や日本の文化に対するリスペクトが感じられます。そうした細々としたことにこだわって、本作を観ないのは、あまりにもったいないのではないでしょうか。
本作が面白い映画であることは間違いないのですから。
CINEMA DATA
2003年制作
【配給】 | ワーナーブラザース |
---|---|
【監督】 | エドワード・ズウィック |
【出演】 | トム・クルーズ |
渡辺謙 他 |
ワーナー・ホーム・ビデオよりDVD発売中
©Eiga-zaru 2004-2018
※掲載している情報は、2006.08.01の情報です。
そのため記載内容が、最新のものと異なる場合があります。
映画猿 バックナンバー
- ポルターガイスト(2006.07.01)
- レオン(2006.06.01)
- アメリ(2006.05.01)
- バットマン(2006.04.01)
- ロスト・チルドレン(2006.03.01)
- フォーンブース(2006.02.01)
- レインマン(2006.01.01)
- 少林サッカー(2005.12.01)
- ナイトメア・ビフォア・クリスマス(2005.11.01)
- スティング(2005.10.01)
- 英雄~HERO~(2005.09.01)
- プライベート・ライアン(2005.08.01)
- ラヂオの時間(2005.07.01)
- ファインディング・ニモ(2005.06.01)
- ブルース・ブラザース(2005.05.01)
- パイレーツ・オブ・カリビアン(2005.04.01)