アメリ

さて、今回はフランス映画「アメリ」をご紹介するわけなんですがどうしたものかと頭を悩ませて、こんな書き出しになっているわけです。というのも何と言いましょうか、本作は実に不思議で奇妙な映画なんです。本作をご覧になった方には私の困惑もご理解いただけるのではなかろうかと思うのですが、とにかく言葉にしにくい映画なのです。ただ一つ、ハッキリと皆様にお約束できるとするならば、本作が大変面白い映画であるということです。
少女時代から孤独で夢想家だったアメリ。彼女はふとした事から周りの人々に干渉し、ちょっとした幸せを届けることを始めます。彼女のその密かな活動は少しずつ周囲を幸せにしていきます。しかし相変わらず、自分のこととなると内向的で臆病なアメリでしたが、ある日拾った鞄に入っていたアルバムが彼女にも幸せになるチャンスを運んできます。
とにかくアメリの秘密活動というか周囲の人々を幸せにする行動が、実に突飛で愉快です。彼女はその人々にちょっとした偶然で幸せが訪れたように演出しつつ、秘密裏に行動します。(どう突飛なのかはご覧になってのお楽しみです)また、本作は空想と現実が混在する世界、アメリの心理風景を独特の映像手法で見事に表現しています。胸のときめく瞬間に胸が透けて、バクバクする心臓が映ったりするのですが、こういう表現が陳腐に見えず、効果的にストーリーを盛り上げているのは監督の力量のなせる技でしょうか。他にもアメリが見ているテレビに彼女の心情がニュース映像のように流れたり、不思議な手法が多彩に使われていて、本作の不思議で奇妙な雰囲気を作り上げています。
監督のジャン・ピエール・ジュネは「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」などで有名で、本作はまさに代表作と言えるでしょう。
本作では独特の映像手法で全く新しい映画を創ったといえるかもしれません。
主演女優のオドレイ・トトゥはなんというか実に表情が愛らしい女優さんで、本作の魅力の大部分を彼女の魅力が支えているといっても良いでしょう。凄い美人というわけではないと思うのですが、とにかくちょっとした表情が印象的なのです。ジュネ監督も彼女を気に入ったと見えて、新作の「ベリー・ロング・エンゲージメント」でも彼女を起用しています。
本作は一風変わったラブストーリーで、全編に流れる不思議で優しいムードはどこか微笑ましい印象を受けます。見終わった後になんとも暖かい気持ちになれる、そういう映画だと思います。もし貴方が、なにかちょっとしたことでイライラしているならば、本作をご覧になるといいでしょう。
きっとリラックスした優しい気持ちになれるはずです。
ですから、普段、このコラムをご覧になって、ご不満やお怒りをお感じになる方は、是非「アメリ」をご覧頂きたい。
子犬を見守るような優しいまなざしで読んでいただけるのではないかと…。
CINEMA DATA
2001年制作
【配給】 | ニューセレクト |
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テレビ東京 | |
博報堂 | |
【監督】 | ジャン・ピエール・ジュネ |
【出演】 | オドレイ・トトゥ |
マチュー・カソヴィッツ |
バンド株式会社よりDVD発売中
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※掲載している情報は、2006.05.01の情報です。
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